菊水山・鍋蓋山・大龍寺 (お勧め度★★☆) 鵯越・鈴蘭台周辺【5-21】 |
六甲全山縦走路の中で第一の難所とされる急峻な菊水山、その東側には急な渓谷天王谷を挟んで鍋蓋山が対峙する。この二座は縦走路の中でも人気のコースだが、先の豪雨で城ヶ越あたりに大きな被害があったという。今日(平成30年9月16日)は、その被害の状況を確認しながら菊水山、鍋蓋山をたどり、その先の再度公園まで足を延ばしたい。再度公園から、再度山大龍寺にもお参りしてみる。 |
神戸電鉄有馬線に乗り、山間の無人駅(鵯越駅)に降り立つ。鵯越駅は各駅停車しか止まらないので、乗車時の車種には注意したい。 鵯越駅から、六甲縦走路に従い、本日一座目の菊水山を目指す(10:16)。改札を出ると、駅前の狭い一角で、多くの者が山への出発準備をしている。容姿から、トレイルランの一行だ。 狭い山道を集団の中で進むのは歩きにくいので、お先に出発しようと思ったものの、ランの方々も、当方と同時刻の出発であった。20名弱の方が、当方の脇を勢いよく駆け抜けていかれた。 |
|
神戸電鉄鵯越駅 | |
鵯越駅から六甲縦走路を進む。ここはよく踏まれた道で、古くからの山道である。周囲には、太くて樹齢を重ねた樹木が多く残っている。一帯は、伐採もされず、植生が守られていたエリアなのだろう。 やがて縦走路は舗装路に合流する(10:27)。縦走路はこの合流地点で左折となる。 しばし舗装路を進むと神戸市水道局烏原ポンプ場が見えてくる(10:29)。縦走路は、この左側を進んでいき、その敷地の裏側の道標「→菊水山」で右下に階段道を下っていく(10:32)。 |
|
鵯越駅を出発 | |
階段道を下ると烏原川沿いの舗装路となる。今日は、烏原川の水音がにぎやかだ。ここ数日の秋雨で、水量が増えている。 烏原川沿いを遡行していくと、左手側に不動明王が見えてくる(写真右 10:37)。 綺麗に清掃された明王に目礼をして先に進むと 舗装路は急な登りになって、右側に「神戸市建設局中央水環境センター鈴蘭台処理場」となる(10:40)。ここで、6名のハイカーが休憩されていた。 |
|
不動明王 | |
水環境センターから、さらに舗装路を進むと、道路がフェンスで遮られている場所に至る(写真左 10:44)。ここは、フェンスの右側の切れ目を進む。フェンスには「六甲山縦走路・菊水山→」の表示があるので、わかり易い。 次に、左手側に「CAFE KIKUSUI BASE!!」の看板が目に入る。(カフェの施設は荒れた感じで、現在は閉店したのかも?)このカフェがある敷地の斜面は土砂崩れが発生していた。先日来の台風の爪痕なのだろう。 |
|
フェンスは右端を進む | |
更に、縦走路を進むと、神戸電鉄の旧菊水山駅の下側に至る(10:50)。この菊水山駅は平成17年3月に営業休止となった。この旧菊水山駅あたりからは、真正面に菊水山が見えている。 次に、石井ダム方向に進む道が分岐するが、そのまま縦走路を進めばつり橋となる(10:52)。従前は、このつり橋から石井ダムが見渡せたが、今は草が茂り、ダム堰堤の一部が窺えるだけになった。 |
|
タマゴタケ | |
つり橋を過ぎると、菊水山に向かう縦走路は少し坂道になる。この坂道で、一人のハイカーを追い越した。 このあたりで、赤色の目立つキノコが道脇に出現していた(写真上)。縁の付近に条線があり、黄色味をおびた柄の斑模様からして「タマゴタケ」と思われる。 |
|
六甲全山縦走路休憩所 | |
更に進んで、六甲全山縦走路休憩所に至る(11:00)。 ここにはベンチが置かれ、多くの方が休憩されていた。 六甲全山縦走路休憩所を過ぎると、菊水山の強烈な登りが待っているので、皆ここで一呼吸置くのである。 当方も、六甲全山縦走路休憩所でしばしの休憩を入れた後、そこを出発した。 |
|
六甲全山縦走路休憩所を出発 | |
六甲全山縦走路休憩所からは、すぐに急なプラ階段のお出迎えとなる(写真左)。相当な斜度に圧倒されるが、ゆっくりと登る。 スローなペースで登っていくが、猛烈に汗が吹き出してきた。もう9月も半ばだが、日照りがきつく、気温も上がっている。背中側から照り付ける太陽に、体力が奪われていくのがわかる。 |
|
菊水山への急登 | |
さらにゆっくりと登ることにする。すると、二人のハイカーが急階段で当方を追い越していかれた。体力の差をつくづく感じる。暑い季節に二か月ほど山から遠ざかっていたが、その間、筋力が著しく低下したようだ。日頃のトレーニングの重要性を認識するも、ここは無理しないことにする。 少し登ると、右手側に菊水ゴルフクラブのグリーンが見えてきた。 きれいな芝生だが、ゆっくり眺める余裕がない。 |
|
菊水ゴルフクラブを見おろす | |
菊水山への急階段は、丸太、プラ、岩と交互に登場し、登山者に襲い掛かるが、ここは牛歩戦術でゆっくりと登る。山頂間近になっても急階段が続き、さらに、日差しもきつくなる。 足も重たくなりながらも、なんとか菊水山頂に登りついた(11:28)。 山頂では、笹に埋もれかけている下谷上三等三角点を確認した(写真下)。三角点の脇を心地よい風が吹き抜けていた。 |
|
菊水山山頂 | |
山頂では多くの者が休憩していたが、その中でも一団の方が、双眼鏡を手にして周囲を観察されていた。何事かとお聞きすると、「鷹」を観ているのだという。悠然と舞うタカの姿にロマンを感じることができるらしい。 この季節、タカの渡りのシーズンで、本州中、北部で繁殖した鷹が越冬地の東南アジアに渡っていくのが観察できるようだ。ここ、菊水山は、渡りのコースの一つということだった。 渡りの観察を通じて、自然保護をも見据えた活動であると聞くので、影ながら応援したい。 |
|
三等三角点:下谷上 | |
巨大な望遠レンズを構える方もいて、渡り観察の熱意が伝わってきたが、視力の悪い当方は、到底鷹を追うことはできない。よって、鷹ではなく山頂からの景色を楽しむことにする。 写真左は菊水山頂から西の明石海峡大橋方面を眺めたものだが、今日は霞がかかっていて、遠望はもう一つだった。 |
|
菊水山からの展望 | |
山頂での景色を楽しんだ後、二座目の鍋蓋山を目指すことにする(11:36)。 縦走路を進むとすぐに「119番通報プレート ち1−10−2」の分岐があり(11:39)、ここを左に進むと鈴蘭台方面となる。 また右側にも分岐があり、そちらに進むと展望台がある。展望台は、小菊水山と呼ばれる小ピークで(写真右)、小さなベンチがあるので進んでみたが、日照りがきつくてすぐに退却した。 |
|
小菊水山 | |
小菊水山から戻りさらに縦走路を進んでいくと、城ヶ越の岩場の手前で倒木が確認できた。 城ヶ越付近は、神戸市HP「六甲山系登山道平成30年7月豪雨・台風20号被害状況(H30.8.27時点)」によると、崩落(危険)の表示がある。この先、慎重に進むこととする。 | |
城ヶ越の尾根 | |
城ヶ越の岩場に到着すると黄色の危険テープとトラロープが張りめぐらされているが、縦走路に特に危険な箇所はないようだ(写真上 11:57)。写真を撮っていると、トレイルランの方が追い越していった。 城ヶ越の岩場からは鈴蘭台方面の住宅地がきれいに遠望できる(写真右)。 |
|
城ヶ越からの景色 | |
ガレた痩せ尾根の城ヶ越の岩場を過ぎて更に下って行くと、黄色の危険テープとトラロープが縦走路を閉鎖していた(写真下 11:59)。
そこから「う回路」が作られており、そちらに進む。 急ごしらえのう回路は、山の斜面にへばりつくような道で、すべらないようにゆっくり進む。そのとき、先ほど当方を追い越していったトレイルランの方の話し声が下方で聞こえてきた。 |
|
城ヶ越の岩場 | |
縦走路封鎖の場所 | う回路 |
何だろう・・と、近づいていくと、そこが崩落地点であった(写真左 12:00)。
足元の急斜面が大規模に崩落して、山土がむき出しになっている。 恐る恐る顔を出し、覗き込むようにして下を見ると、有馬街道を行き交う車両の屋根が真下に見えていた。これは、やばい感じだ。登山道だけでなく有馬街道の安全通行のためにも、一刻も早い復旧工事が望まれるが、素人目にも困難な作業のように思われた。 |
|
崩落現場 | |
崩落個所を過ぎて、更に六甲縦走路を下って行く。 その先も、ガレた岩場の急下りが続くので、足場に注意して下って行く。次に、鉄網の急階段を二つ下って(12:08)、その先も、岩場の急下りが続く。 急な下りが終わると、そこはダム堰堤の下で、その先に池のような大きな水たまり登場する(写真右 12:12)。この池は、昭和27年築の長坂堰堤に水がたまったもので、最近の多雨で水位が非常に上がった状況になっていた。 |
|
長坂堰堤の水たまり | |
長坂堰堤を過ぎると、天王吊橋となる(写真左 12:15)。 吊り橋の下では、多くの車が行き交っているが、先ほどの崩落箇所のことを思うと、この一帯の有馬街道は危険と隣り合わせであることがわかる。 天王吊橋を渡ると鍋蓋山への登りとなる。鍋蓋山への登りは、山の斜面のつづらの道である。細かい刻みでつづらの登りが続き、ここも足への負担が半端ない。 ゆっくりと登っていく。 |
|
天王吊橋 | |
天王吊橋から15分程登ったところで、木製の階段が登場し、それを登ったあたりで菊水山方向を振り返ると、先ほど通過した菊水山の崩落個所が遠望できた(写真右 12:31)。 緑の山肌が3か所削り取られ、無残な姿になっている。心が痛む思いだ。 |
|
菊水山を振り返る | |
さらに、つづらになった道を登っていくと、その先で岩場の急傾斜となる(写真左 12:37)。ここで、下ってくるハイカーとすれ違う。 6人のシルバー世代のパーティーで、急な岩場の下りに、少々悪戦苦闘の様子である。ここで、やや足止めとなった。 6人のパーティーが下った後、段差のある岩場を慎重に登る。 |
|
鍋蓋山の急な岩場 | |
森林リフレッシュ事業 | 鍋蓋山へ続く尾根道 |
岩場を登りきると、道は平坦な尾根となり「森林リフレッシュ事業」の看板が登場する(写真左上 12:41)。このエリアは間伐がされて森が整備されている。 展望が開け、気持ちよいエリアとなるが、今日は日光が強く、日陰のない尾根はきびしい。早く通り過ぎたいが、しばらくは「森林リフレッシュ事業」の地域が続き、暑さでバテバテとなってしまう。 そんな当方の脇を、トレイルランの健脚ハイカーが何人も追い越していった(写真上)。 またまた、トレーニング不足を実感し、反省するもどうしようもない。気力を振り絞って、足を前に出す。そんな、悲惨な状況ながら、なんとか鍋蓋山に登りついた(12:55)。 |
|
鍋蓋山 | |
鍋蓋山では15名ほどの者が休憩中であった。鍋蓋山の山頂は二段になっていて、上段には三角点がある(写真左)。下段にはベンチがあり展望もあるが、今日は日差しがきつく、だれもベンチに腰掛けてはいなかった。混雑する鍋蓋山の山頂だが、ここで15分程の休憩を入れる。 休憩中、ここから先のルートを検討する。今日は、鍋蓋山から鍋蓋北道を経て、再度公園に進み、その先は再度山大龍寺にお参りしてみることにする。 |
|
四等三角点:点名 鍋蓋山 | |
鍋蓋山を出発し、縦走路を東に進む。鍋蓋北道への分岐で左折し、鍋蓋北尾根に入る。鍋蓋北尾根は伐採間伐の手入れがなされ、気持ちのよいハイキングルートとなっている(写真右)。木々の間から、麓の市街地が見えている。 | |
鍋蓋北尾根 | |
やがて登場する分岐で右折する(13:20)。ここには、道標があり「再度公園・弘法大師行場」と案内される方向に進む。 少し薄暗い道となったところで、白いキノコを確認した(写真左)。六甲でよく見る種だが、有毒っぽい雰囲気をふりまいている。 その先、5分少々で再度公園に到着した(13:27)。ここで、昼食を兼ねた大休憩を入れることにする。 |
|
怪しいキノコ | |
再度公園は、再度ドライブウェイを利用して車でも来園できるので、ハイカー以外の行楽客も多い。公園の修法ヶ原池湖畔のベンチでは多くの客がくつろいでいる。 湖面に再度山の姿が逆さに写り、絵はがきのような景色が広がっている。再度公園は、神戸外国人墓地とともに、国指定名勝である。 |
|
国指定名勝再度公園 | |
なお、再度山は永久植生保存地でもある。 神戸の水源涵養、砂防のため、明治35年、再度山北斜面に六甲山の緑化事業が実施された。そこで、神戸市では、この再度山を植生の変化などを調査記録するための保存地とした。それが、永久植生保存地ということである。 |
|
再度山と修法ヶ原池 | |
また、修法ヶ原池の湖畔は紅葉の名所としても知られる場所である。また、秋にも訪れてみようと思いながら、長めの休憩を終え、再度公園を出発した(14:00)。 次に、再度公園の近くにある大龍寺にお参りしていくこととする。 | |
修法ヶ原池 | |
再度山周辺は、何度も歩いているが、素通りすることも多い大龍寺に、今日はちゃんとお参りしていきたい。 再度公園から再度越道を南に進み、六甲縦走路に合流する。そのまま、縦走路を東に進むと、すぐに大龍寺の境内に至る(14:12)。 |
|
大龍寺本堂 | |
別格本山再度山大龍寺は、和気清磨呂公がこの地で刺客に狙われた際、「如意輪観世音菩薩」の化身たる大蛇に助けられ、霊験を感じられた公がこの地に伽藍を建立したのが起源とされる。古い由緒のある大龍寺は、以来、霊験の伝説が多い。 | |
大龍寺参道 | |
せっかくお参りしたので、御朱印もいただいていくことにした。【大龍寺の御朱印】寺務所のある霊明殿に進み、御朱印をお願いしたところ、「よろしければお上がりください。お茶を入れますので。」と丁寧にお声掛けをいただく。お言葉に甘え、霊明殿でもお参りして、冷たいお茶を頂戴した。ありがとうございました。今日は連休の中の一日で、御朱印の参拝者も多かったらしい。なお、大龍寺は、ぼけ封じの御利益もあるというので、家内の分も含めてしっかりとお参りした。 | |
大龍寺仁王門 | |
大龍寺を辞し、そろそろ下山を始める(14:35)。今日は、大師道を下って行く。 丁石に導かれてどんどん下って行くと、猩々池が見えてきた。湖畔で二人のハイカーが談笑している。猩々池を過ぎ、池の下に回り込むように大師道を進むと、猩々池をオーバーフローした水が滝になって流れ落ちていた(14:48)。 猩々池はいつも水量が少なく、ここで滝を見たのは初めてであったので感激だった。 落差は10mを越えていそうで、なかなか見応えのある猩々滝だった。 |
|
猩々池の滝 | |
猩々滝を過ぎ、やがて燈籠茶屋、灯篭の大クスまで下ってきた(15:14)。 灯篭の大クスには、「制定平成14年1月 太さ3m25cm」との表示がある。存在感のある大木なので、史跡かなにかに制定されたのだろうと、ググってみたがよくわからなかった。 燈篭茶屋、稲荷茶屋と過ぎ、神戸山手学園の横を下って行くと、諏訪山公園の角の石垣に「←大師道(再度谷)」の道標が確認できる。ここが大師道の起点である。 |
|
灯篭の大クス | |
その先、神戸市街地に入り、さらに南に下って行くと「花隈城址」に突き当たった(15:52)。ここは脇を通過することが多いので、今日は城址に登ってみた。 天正6年(1578年)、荒木村重が織田信長に反旗を翻し、花隈城は荒木方の支城として戦ったが、池田恒興などに攻められて落城した。その後、花隈城は廃城となり、今は、石垣を残すだけのさみしい姿である。ビルの間に残る城址の石垣が、長い時間軸の流れを教えてくれていた。 花隈城址からは、阪急花隈駅に進み、帰途についたのであった(14:05)。 |
|
碑 花隈城址・東郷の井 | |
花隈城址 | 花隈城址(石垣) |
●花隈城址の石碑は、平成7年の阪神淡路大震災により倒壊し破損したものを資料に基づき新たに模造し、復旧したものとの掲示がある。 ●碑「東郷の井」由来 神戸において建造された初代戦艦大和の艦長東郷平八郎が神戸滞在中に使用した井戸に由来し、1930年に建立 当時の海軍大将 財部彪が書、海軍中将 小笠原長生揮毫 |
HOME | 1表六甲 | 2北六甲 | 3西六甲 | 4東六甲 | 5鵯越周辺 | 6丹生山系 | 7関西の山 |