倶留尊山・曽爾高原 (お勧め度★★★) 関西の山【7-30】 |
曽爾高原(そにこうげん)は、奈良県宇陀郡曽爾村にある高原で、一面ススキに覆われた約40ヘクタールの草原の斜面が圧巻だ。半すりばち状に開けた草原は標高700から800mで、秋には、金色、銀色に輝くススキの穂を求めて多くのハイカーや観光客が集まる。今日(平成30年10月28日)は、その大パノラマを求めて曽爾高原から二本ボソ、倶留尊山(くろそやま)を巡ってみた。 |
近鉄電車に「曽爾高原すすき散策きっぷ」という、お得な割引切符があることを知った。名張までの電車と曽爾高原までの三重交通バスの往復乗車券がセットになって2980円の代金(鶴橋から)だ。ススキも見ごろになってきたので、これは行ってみなければと思い立ち、早朝に自宅を出た。 JR三ノ宮駅で敦賀行きの新快速に乗り込み(7:30)、大阪駅で環状線に乗り換え、鶴橋駅に到着(8:09)。近鉄との乗り換えの窓口で、「曽爾高原すすき散策きっぷ」を買い求めて、近鉄電車の青山行き急行に乗りこんだ(8:18)。 |
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曽爾高原バス停 | |
一時間少々電車に揺られ名張駅に到着した(9:23)。駅前のコンビニで飲料と食料を調達してバスに向かう。バス停は長蛇の列。客数が多く、臨時便が増発されて、運よく席にありつく。 車窓から景色を眺めながらバスは進む。観光バスではないが、運転手さんがマイクでガイドをしてくれる。 景色の良い正連寺湖畔を過ぎると、バスは、もの凄い渓谷の道に入っていく。ここは、名張川の支流・青蓮寺川に沿う香落渓(かおちだに) で、関西の耶馬渓とも呼ばれるらしい。柱状節理の岩肌が迫る細い渓谷の道をバスは進む。 |
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曽爾青少年自然の家への道 | |
路線バスは、予定の時間を10分程超過して、曽爾高原バス停に到着した(10:35)。
所要時間はジャスト一時間であったので、満席で立っていた多くの乗客の方には困苦の道中であった。 バス停で軽く準備運動をしてから、トイレ横の山道に入り、つづらになった坂道を国立曽爾青少年自然の家の方に登っていく(10:43)。曽爾青少年自然の家の駐車場まで登ってくると、曽爾高原の草原が一部見えてきた(写真右)。 |
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曽爾高原が顔を見せる | |
曽爾青少年自然の家の駐車場からは真正面に兜岳(標高920m)と鎧岳(標高894m)が見えている(写真左)。 兜岳と鎧岳は目立つ山容で、バスの窓からもその威圧感ある形が見えていた。 鎧岳の名は、この山の桂状節理の岩肌が鎧のおどしに似ており、その威圧感が鎧武者を思わせることから名付けられたと聞く。一方の兜岳は、その鍬形の兜のような山容から名付けられたらしい。いずれも異形な姿が魅力的で、国の天然記念物に指定されている。 |
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真正面に兜岳と鎧岳 | |
機会があれば、兜岳と鎧岳にも登ってみたいが・・・などと、思いを巡らせながら、曽爾青少年自然の家の駐車場の脇から、曽爾高原への道に入っていく(10:57)。 草原入口には、曽爾高原案内図の大きな看板があり、周囲の地図が掲げられているので、これでルートの再確認を行う(写真右)。 |
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曽爾高原案内図 | |
草原に入ると、すぐにお亀池の脇に着く(11:06)。お亀池では湿原特有の希少な植物を見ることができ、池の周囲には散策者が多いが、当方は半すりばち状の高原を目指して、ススキに挟まれた草原の中の階段道を登り始めた(11:07)。 階段の坂道は、傾斜があるが、老若男女の散策者が山頂方向に向かっている。 |
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曽爾高原に突入 | |
草原の階段道は次第に傾斜がきつくなる。階段を下ってくる者とのすれ違いも多いので、ゆっくり登っていくこととする。 曽爾高原のすり鉢の斜面を登る道は、次につづらに切り返しながら、さらに高度を上げている(写真右)。道脇の、ススキの穂が風に揺られて、爽やかな感じだ。 |
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曽爾高原のすり鉢を登る | |
急勾配の階段道で疲れたら、麓を見下ろしながら休憩したい。 麓のお亀池が、かなり小さくなっている。池の周りを周遊するハイカーの姿も小さくなり、米粒程度にしか見えなくなっている。 なお、お亀池の名は、お亀に化けた大蛇伝説からきているらしい。参考1 参考2 |
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お亀池を見下ろす | |
ススキの中の階段道を登りきると、そこは亀山峠である(11:25)。亀山峠は倶留尊山方面と亀山方面の分岐となる。ここには道標があり、峠から右に0.4km進めば「亀山山頂」、峠をそのまま先に下って行くと「太郎生・美杉」、左に0.8kmで「二本ボソ」、1.5kmで「倶留尊山山頂」と説明してある。 亀山峠では多くの者が休憩しながら、曽爾高原の圧巻の展望を楽しんでいる。 亀山峠で少し休憩を入れた後、二本ボソ、倶留尊山方面に進むこととする。 |
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二本ボソに向かう稜線 | |
亀山峠から二本ボソに向かう道は尾根の稜線で、左側は切れ落ちた草原、右側は杉の木に覆われた樹林帯である(写真上)。ここはきつい風が吹き抜けて、雄大な自然を直に感じる道である。展望も最高で、曽爾高原のすり鉢を見下ろし、その先には、集落を挟んで、鎧岳、兜岳が対峙しているのが見える。 岩がむき出しの箇所もあり、注意して進んでいくと、展望広場なる場所に到着した(写真左 11:47)。ここも、多くの方が休憩がてら展望を楽しんでいる。そろそろお昼であり、展望広場で昼食のお握りを頬張ることにした。 |
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展望広場 | |
曽爾高原の山焼き | 煙が一面に立ち込める |
昼食を食べながらのんびりと大草原の展望を楽しんでいると、周囲がざわついてきて、煙が一面に立ち込めてきた。パチパチと草の燃える音もしている。ゲゲゲッ!!山火事か・・・と、身構えたところ、なんと山焼きが実施されていた。 本来の山焼きは3月らしいが、その際に燃え残る個所があるので、この時期に一部山焼きを実施するのだという。 今日は、曽爾高原の大展望だけでなく、山焼きの実践まで楽しむことができた。なお、山焼きは、ススキ以外の植物の生育を抑え、灰を肥料とするために、毎年3月に行われる。 |
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二本ボソに向かう | |
山焼きの現場をしばらく眺めた後、山焼きの煙の中に突入し、炎をよけながら先に進むことにした(12:16)。次の二本ボソに向かう。 稜線から樹林帯に入るところ道標があり、「二本ボソ0.3km、倶留尊山山頂1.0km」と案内されている。と、同時に「この先は入山料が必要となります」の表示もある。この先は私有地のようだ。 雑木の中の岩が露出した坂道を登っていくと、やがて山小屋が見えてきた(写真右 12:23)。そこで、入山料500円を支払う。倶留尊山・二本ボソの清掃、維持管理のための入山料との説明がある。 |
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二本ボソの山小屋 | |
山小屋のすぐ先が「二本ボソ」(標高996m)の山頂となる(12:26)。この名称は、その昔、ここの山頂に二本のホソの巨木があったことに由来するらしいが、現在はホソの木はないとのこと。山頂にはケルンが積まれ、なぜか兵庫登山会の「二本ボソ 980m」の看板が設置されていた。兵庫登山会の看板は六甲山周辺ではよく見かけるが、こんな遠くの山でお目にかかかれて少し感激!。 | |
二本ボソ | |
倶留尊山 | 二本ボソからの展望 |
二本ボソからは真正面に「倶留尊山」が対峙する(写真上)。秋の紅葉が始まった倶留尊山の姿は感動だ。二本ボソは、展望がよく、多くのハイカーが休憩している。二本ボソからは、伊勢湾や、青山高原の風力発電の施設が見えるようで、山小屋の方らしき男性が説明してくれた。二本ボソから少し降りたところにイワシの口と呼ばれる場所もあり、そこから三重県側の山並が望めるとの説明なので、そこは帰路で立ち寄ることにする。二本ボソから倶留尊山までは30分で行けますよとの説明に後押しされ、二本ボソから倶留尊山に向けて出発する(12:36)。 | |
倶留尊山に向かう | |
倶留尊山までは30分の距離との説明であったが、結構深い谷越えの様相だった。急傾斜な道を覚悟して坂を下って行く。 山道は、よく踏まれたしっかりした道で、多くのハイカーが行き交う道であることがわかる。途中、石楠花の木が両側に並ぶ場所もある。花の季節はきれいなのだろう。 |
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片側は切れ落ちた斜面 | |
倶留尊山への道は、やはり急な箇所が多く、ロープにすがったり、岩をよじ登ったりと、注意を怠ることはできない。 山道の周囲は、雑木に囲まれているが、よく確認すると片側が垂直に切れ落ちた斜面になった個所もある。山道は尾根の端を進んでいるようで、木々がなければ足も竦む怖い道であろう。 |
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倶留尊山への登り | |
途中、右手側(三重県側)に、樹木越しで麓の景色が望める場所もあった(写真左)。三重県津市美杉町太郎生の集落が見えているのだろう。景色を眺めながら休憩を入れ、倶留尊山への急登をゆっくりと進む。 | |
樹木越しの展望 | |
やがて、倶留尊山に到着(写真右 13:02)。想定通り、30分弱の道のりだった。 倶留尊山山頂は少し開けた広場になっていて、大勢の人が休憩中だった。倶留尊山の山名表示と三角点にタッチして、登頂を実感する。倶留尊山は二本三百名山の一つで、曽爾村の最高峰でもある。 |
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倶留尊山に至る | |
三等三角点:具留尊山 | 倶留尊山山頂 |
倶留尊山からは、二本ボソが対峙して見える(写真右)。二本ボソも紅葉になっているようだが、逆光で展望はもう一つである。二本ボソの向こう側に、曽爾高原の山焼きの煙がたなびいている。 倶留尊山で休憩していると、二本ボソとは反対側から倶留尊山に登ってきたグループもいた。倶留尊山縦走のルートで、西浦峠から登ってきたようだ。 しばらく、倶留尊山山頂で休憩し、二本ボソに戻ることとした(13:14)。 |
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倶留尊山から二本ボソを望む | |
岩稜の急な岩場の下りをロープを頼りに一旦鞍部まで降りる。そして、急坂を二本ボソまで登り返す。雑木や灌木の自然が溢れる景色が気持ちを和ませてくれる。 26分を要して、倶留尊山から二本ボソに戻ってきた(13:40)。 |
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二本ボソから再び倶留尊山を望む | |
二本ボソではイワシの口という展望場所に降りて、景色を堪能することにする。 イワシの口という呼称は、麓から見るとこの場所がちょうど「イワシの口」のような形に見えるので名付けられたらしい。 |
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イワシの口 | |
ロープにつかまりながら、二本ボソから少し斜面を下ると、展望の岩場が登場する。「イワシの口」と書かれた板が岩の上に置かれている。ここは三重県側に展望が開けている。 左手側、前方遠くに見えているのは、尼ヶ岳と大洞山であろうか。尼ヶ岳は、伊賀富士と呼ばれるきれいな円錐形の山であるから、左側のとがった山が、おそらく尼ヶ岳だろう。尼ヶ岳と大洞山はいずれも関西100名山の一つである。 |
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イワシの口からの展望 | |
二本ボソ(イワシの口)で景色を堪能したので、そこを出発することとした(13:52)。 ロープにつかまりながら、イワシの口から二本ボソに登る。そこから二本ボソの山小屋に向かう。山小屋で500円の入山チケットの半券を返却する。 二本ボソから山道を下り、曽爾高原が展望できるとこまでもどってきた(写真右 14:00)。ここでも、多くの人が曽爾高原の展望を楽しんでいる。山焼きの煙が遠くに離れていっている。 |
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曽爾高原に戻ってきた | |
だいぶ、山焼きも進んでいるようだ。しかし、往路の時と様子が異なる。それは、麓の方から消防車の大きなサイレンの音が聞こえてくるからだ。どこかで、火事が発生したようだ。 | |
山焼き跡 | |
火事はどこだろうと、消防車のサイレンの音を追っかけると、その音はどんどん曽爾高原に近づいてくる。おまけに、消防車は一台ではなく、二台も三台もやってきているようだ。曽爾高原が消防車のサイレンに包み込まれた感じだ。 野焼きの火が周囲に類焼したのか???、大変なことになったのでは??・・・、思い、野焼きの現場を遠望し、そこまで進んでみることにした。 |
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ヤッキリ焼の現場 | |
どうなっているんだ・・、と心配半分、興味半分で、野焼きの現場の亀山峠の方に下って行く。 10分少々で野焼きの現場まで下ってきた。野焼きの作業は順調に進んでいた。作業担当の方は、周囲の木々やススキに火が燃え移らないように、忙しそうに作業を進めている。野焼き作業は問題なく進捗しているので、消防車は、もしもの時のための待機であったようだ。 (^-^; 。 |
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亀山峠からヤッキリ焼を遠望 | |
なお、この山焼きは「ヤッキリ焼」と言うらしく、3月に本番の野焼きする前に 周囲の木に火が燃え移らないようにする準備でもあるようだ。事前に、防火帯を設けておくのが「ヤッキリ焼」の目的の一つということだ。 往路と復路で、ヤッキリ焼きの炎の熱さを肌で感じることができ、貴重な体験だった。 |
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お亀池に向かい下る | |
「ヤッキリ焼」の現場を過ぎ、亀山峠にもどってきた(14:24)。もう午後の2時を回ったが、まだ、まだ、亀山峠に向かって人が登ってくる。 この曽爾高原は、夕日の頃にススキが黄金色に輝くと聞くので、夕刻からの人気も高いらしい。 曽爾高原のススキの階段道を下り、お亀池脇から青少年自然の家まで下ってきた。ここの駐車場では大きなサイレンと共にやってきた消防車が帰り支度をしていた。その帰路につこうとする消防車が、坂道の角度のある段差で車底がこすれて立ち往生していた。車高短ではないだろうに、緊急時に大丈夫か?!と、やや不安を覚える光景だった。 |
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曽爾高原を後にする | |
バス停まで戻ってきて、帰りのバスを確認する(15:03)。路線バスは15時27分発だが、乗客の多いこの時期は、満員になり次第、臨時便が出ているとのこと。当方が、乗り込んだバスは15時30分に出発したが、乗客は疎らであった。もう、ほとんどの客は先ほどのバスで帰途についたようだ。しかし、次の、曽爾高原ファームガーデンバス停で、多くの乗客が乗りこんできて、バスは通路の立ち席を含め、超満員に。 50分ほどのバス旅で名張駅に到着(16:18)。名物の名張饅頭を買い求め近鉄急行で帰途についた。今日は曽爾高原の展望に、大満足の一日となった。 |
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お土産は名張饅頭 |
● 倶留尊山は曽爾村の最高峰で、別名「くるそやま」ともいう。倶留尊山の名称は、この山の北西面、滝川上流に祭られている、「くろその石仏」と呼ばれる石仏に由来するといわれている。 |
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