帝釈山・帝釈鉱山跡・丹生山 (お勧め度★☆☆) 丹生山系【6-11】

鉱山として長い歴史を持つ帝釈鉱山の跡地を訪ね、
さらに、帝釈山、丹生山と丹生山系の名峰を巡ってみた。

Route MAP
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説明が青色文字の写真はクリックで拡大します。
 神戸市北区では「北区ハイキングレクリエーションガイド」を発行している。このガイドに搭載のある「鉱山跡・帝釈山コース」は未踏であり、また、鉱山跡とはどんなものか興味があったので、今回(平成21年12月27日)は、そのガイドに従い丹生山系の帝釈山と丹生山を巡ってみたい。
 ガイドでは箕谷から市バスで丹生神社前まで行き、そこからハイクがスタートとなっているが、当方は神鉄藍那駅から、藍那古道を進み、鉱山跡・帝釈山コースに入ることにした。
 ついでに未到の三角点(北川原)を探査してみる。
藍那古道分岐(古道は左へ)
藍那古道分岐(古道は左へ)
藍那古道  藍那駅を10時にスタートし藍那の集落の中を藍那小学校まで進む(10:10)。藍那古道はここから北に延びている。
 薄暗い林道を10分程進むと、右手側に長坂山への道が分岐していった。ここには「まりの山」という標識が掲げてある。従前はなかった案内だが・・・、と気にしつつも古道を直進する。
 少し進み、道沿いに田んぼが現れると、暗い林道から明るい道となる。次に分岐が現れる(写真上)が、ここで藍那古道は左に入る(10:28)。直進は田んぼ道である。
 左折してすぐにハイカーとすれ違う。古道を山田の里から歩いてこられたのだろう。
藍那古道
 藍那古道は、藍那と丹生山麓の東下と西下の間を結ぶ古道である。
 山田の伝承では、この道を義経道と伝えている。義経が一の谷の合戦に赴く際、鷲尾三郎が一行を案内した道とされる。
 義経一行はこの藍那古道を突き進み、藍那の集落を抜けて、二軒家の相談ケ辻を通って鵯越(逆落し)に向かっていった。
 このように藍那古道は、歴史のある古道で「つわものどもの夢の跡」に浸りながら歩ける道であるが、道中に白と黒の車が捨てられ、朽ち果てている光景は興ざめであった。
 11時15分、鷲尾家墓所の石柱を過ぎると、すぐに山田の里に出てきた(写真右)。
山田の里に出て来た
山田の里に出て来た
福田寺  山田の里では訪ねてみたいところがあった。
 義経一行の鵯越までの案内役であった鷲尾氏が開いたという福田寺(ふくでんじ)である。
 山田町東下に入ると寺への案内表示もあり、それに従い寺への道を辿る。
 この寺は室町時代までは鷲尾氏の私寺であったようだが、現在は東下の集落の寺となっている。
 入口には立派な石柱で寺の名が記してあり、これが一際目立つ。禅宗(曹洞宗)の寺であり、座禅会を開いているとの案内もされていた。門の前に立つと、その歴史ある寺からは凛とした雰囲気が伝わってきた。
福田寺
丹生神社鳥居 丹生宝庫
丹生神社鳥居 丹生宝庫
地蔵  福田寺から丹生神社前バス停横の鳥居(写真左上)まで戻り、そこから丹生、帝釈の山々を目指すことにした。
 鳥居をくぐり、田んぼの中の地道を進む(11:28)。すぐに志染川を渡る。
 坂道を登っていくと右手に丹生宝庫が現れる(写真上)。ここには、長い時代を過ぎ、わずかに残った明要寺の什器や遺品が納められているという。その遺品の中には清盛が寄進した「明要寺全図」もあるとされる。これによれば、往時の寺の偉容が伺えるというが、明要寺は明治2年の廃滅により廃寺となった。
 明要寺・・・丹生山頂にあった仏教伝来以前に起源を持つという古寺。542年の創建と伝えられる。
地蔵
 次に道の真中でお地蔵さんが迎えてくれる(写真上)。
 これは丹生神社からの25丁目の丁石で、「従丹生山廾五丁」の文字が彫られている。
 地蔵を過ぎて突き当りを左に折れる。車止めを越えて、山登りが始まる(11:34)。
 急坂を上っていくと、すぐに左手側に立つ大きな石柱が目に入る。従丹生山廾四丁の文字が彫られている。
 これは、清盛が月詣でのために1丁ごと立てたという石丁である。
 さらに急坂を登っていくと、廾三丁の石丁が現れた。これも古いものである。 
丹生神社参道の石丁(廾二丁)
丹生神社参道の石丁(廾二丁)
北川原三等三角点  次に廾二丁の石丁が現れ、その石丁の上手の木に赤テープが巻かれていることに気が付いた。そこから薄い踏み跡が藪の中に続いている。
 そうだ、この辺りに「北川原三角点」があり、それも今日の目的の一つだったのだ。石丁に気を取られ、すっかり三角点の探索を失念していた。この赤テープは三角点に導くものに違いないと信じ、さっそく藪に突入した。
 踏み跡に従い、2分ほど進むとピーク状の場所となった。想定どおり、そこには標石を示す白い杭があり、落ち葉の中に北川原三角点が頭を覗かせていた(写真左)。
北川原三等三角点
 ところで、三角点の上面には見慣れない黄色い丸いシールのようなものが張ってある。見ると「ucode」と書いてある。なにかチップのような感じもする。三角点を長く見てきたが、これは始めてみた。だれかがいたずらをしてこんなものを張っているのかとも思ったが、気になる。
 帰って調べてみると、これはインテリジェント基準点というそうで、国土地理院のHPでは「国家基準点にICタグを付加したインテリジェント基準点の整備を進めています。これにより高度な位置情報の利活用、国家基準点の統一的な維持管理、測量作業の効率化が期待されます。」と説明されていた。時代は進んでいるということだ。
丹生神社参道
丹生神社参道
鉱山道が分岐する手前の広場 表参道と鉱山道の分岐(右が鉱山道)
鉱山道が分岐する手前の広場 表参道と鉱山道の分岐(右が鉱山道)
 北川原三角点から石丁の続く丹生神社参道に戻り、次に帝釈鉱山跡を目指す(11:50)。
 廾一丁、廾〇丁、十九丁と2分弱毎に石丁が現れる。半分折れている十八丁の石丁が登場するとすぐ丹生橋から登ってきた林道が左側から合流してきた(11:58)。そしてすぐに広場状の場所に出て(写真上)、そこを過ぎると丹生神社(丹生山)への参道と、帝釈鉱山道とが分岐した(写真右上)。ここで5分程休憩した後、帝釈鉱山を目指して分岐を右に進んで行った(12:05)。
 帝釈鉱山への林道に入るとすぐ鎖の車止めがある。それを越え、落ち葉の積もる快適な林道を北に進む(写真右)。
帝釈鉱山への林道を進む
帝釈鉱山への林道を進む
祠(帝釈鉱山・稲荷社)  分岐から15分ほど進むと、左手側に猪の罠らしきものが設置してあった。車が入れるのはこの辺りまでで、ここからは細い山道となる。
 ところで、ガイドブックによると、この辺りに古い祠があるとされる。しかし道沿いにそれらしきものは確認できなかった。おかしいなと思い、少し道を引き返してみた。しかし、みつからない。「あ〜あ!!」と、天を仰いだとき、道から少しはなれて、左手側の山腹斜面に祠が座しているのを偶然発見した(写真左)。
 神の導きとは、このことかと感動し、さっそく祠におまいりした。
祠(帝釈鉱山・稲荷社)
 祠は二本の大杉にはさまれていた。その木枠には「帝釈鉱山・稲荷社」とマジックで雑に記載してある。
 この祠が稲荷神社かどうか不知であるが、HP「北神戸 丹生山田の郷」では、帝釈鉱山は多田源氏が開発した可能性があるとの説明があり、この祠も多田の金山彦神社と同じ採鉱冶金の神である金山彦命を祀っているらしいと解説されている。
 稲荷神社は一般に「食物神・農業神・殖産興業神・商業神・屋敷神」と説明されることからすれば、祠の木枠の表示より、HP「北神戸 丹生山田の郷」の説明に首肯するものである。
帝釈鉱山手前の廃鉱のテラス
帝釈鉱山手前の廃鉱のテラス
鉱山手前にスズメバチの巣が  祠から山道に戻り、次に帝釈鉱山跡を目指す(12:33)。
 すぐに川(北山川)を渡る。岩の多い道となって、すぐに分岐点となる(12:38)。右は岩の重なる道で帝釈山に通じる。左は落ち葉の道で鉱山跡に通ずる。
 ここは左に進み、帝釈鉱山跡を確認してみることにする。
 左手側に谷川を見ながら進んで行くと、前方に赤茶けた廃鉱らしきものが山積みされた場所が見えてきた(写真上)。その堆積物の中に道は続いているので、足元に注意して先進する。
鉱山手前にスズメバチの巣が
 しかし、足元ばかり見ていてはいけないことにすぐ気が付いた。前方の岩肌に何やら怪しげなものが付着しているのだ。遠めにも、それがスズメバチの巣であることが見て取れた(写真上)。蜂の非活動期であることは分かるが、そばを通過するのは気持ちのいいものではない。急ぎ足で巣の下を通過する。
 すると右手側に鉱山跡の大穴が現れた(写真右 12:45)。立入禁止と表示があるが、真っ暗で不気味な大穴に立ち入りたいとは思わない。
 なお、この帝釈鉱山跡の穴のすぐ右側に急斜面をよじ登る踏み跡がついている。この上にも鉱山跡があり、さらに進むと縦走路に出るようだ。
帝釈鉱山跡
帝釈鉱山跡
梵天滝  なお、帝釈鉱山跡の坑口の左側奥には梵天滝がある(写真左)。水量は少ないが落差は相当ある感じだ。
 ところで、多田繁治さんの言葉を借りると、この滝は「この山系で一番落差の大きい  滝が人目を引く。水量は少ないが、滝を構成する複雑な岩脈と、両岸高く積み重なる巨岩が私達を威圧する。」と表現される(「北神戸の山やま」神戸新聞出版センター刊)。
 その高度感からくるであろう「威圧」という言葉にはまったく同感だ。
梵天滝
 帝釈鉱山跡を確認した後、また、先程の分岐点に戻ってきた。こんどはここを右に取り、帝釈山を目指して岩の多い急坂を登り始める(12:50)。
 深い木々で陽光が遮られ、薄暗くなった岩の重なる道を黙々と登る。この登りは、あまり楽しい道ではない。
 岩の重なる道が終わると、次に落葉の積もる急な山道となる。ここも薄暗い急坂が延々と続く。この登りもあまり楽しくない。30分程登り続けて、丹生縦走路に合流した(13:20)。ここも薄暗い。
 この合流地点は左(西)に進む。さらに急坂が続く。傍らにはトラロープが張られているので、それにすがるようにして登っていく。
帝釈山
帝釈山
帝釈山三角点  帝釈山への急な山道を進んでいると、途中、左手側(南側)に青色のビニールテープで道を塞いである場所があった。そこを下っていくと、先程の鉱山跡に下り着くのではないかと思われるが、詳しいことは承知していない。
 さらに山道を進み、なんとか帝釈山に登り付いた(写真上 13:36)。
 帝釈山頂は南側に視界が開けている。その景色を楽しみながら、しばしここで休憩する。
 なお、帝釈山山頂には、帝釈山二等三角点がある(写真左)。この三角点にも「ucode」が貼り付けられていた。
帝釈山三角点
 帝釈山頂上で休憩した後、次に丹生山を目指して出発する(13:44)。
 丹生山系縦走路を西に進むが、この道はよく整備されていて歩きやすい。
 小さなアップダウンを繰り返して道は続くが、小ピーク状の所で、木に巻かれた黄色いテープが目に入った。従前、ここを歩いたときにも気が付いたが、このテープには「西帝釈山」と書かれている(写真右)。地図にはない山である。
 山名の記された黄色いテープは風雨にさらされ、だいぶ傷んでいる。やがて、西帝釈山も消えてなくなる感じだ。
西帝釈山 ??
西帝釈山 ??
丹生山系縦走路 丹生神社
丹生山系縦走路 丹生神社
丹生神社参道石柱(一丁)  丹生山へと続く縦走路は、次第に高度を下げていく(写真左上)。
 帝釈山が585mで、丹生山は515mなので、帝釈山から丹生山までは70mほど下ることになる。
 途中、掘割状の鞍部を越えていく(14:05)。この窪地のところには、そこから丹生会館へ下れる旨の案内表示がある。

 丹生山には14:25に到着した。さっそく丹生神社にお参りする(写真上)。丹生山には、従前、仏教伝来以前に起源をもつという明要寺という寺があり、丹生神社はその寺の鎮守社であったとされる。
丹生神社参道石柱(一丁)
 丹生神社でしばし休憩の後、山を下ることにした(14:32)。
 ニの鳥居をくぐり、明要寺跡を左手に見て表参道から下る。明要寺跡の角地には従丹生山一丁の丁石が立てかけてあった(写真上)。これが、麓から続いていた丁石の最終のものと思われる。
 表参道は5分ほど下って左右に分岐した。左が参道で、右は義経道である。義経道は、箱木千年家辺りに下っている。今日は、この分岐を右に進み、義経道を下ることにした。
 義経道は、義経が平家追討のため鵯越に行く途中通ったと伝えられる道である。
義経道
義経道
義経道から箕谷方面を望む  義経道に入るとすぐに道脇に古い墓地が登場した(14:41)。見るからに古そうな石塔が並んでいる。ガイドブックによると、これは明要寺の歴代の墓であると説明されている。由緒のある寺であったというが、ここは手入れもされず荒れた感じが痛々しい。
 ところで、義経道は急な下りである。また、石ころの多い道でもあり、その上に落ち葉が積もり、すこぶる歩き難い。倒木もあり注意して下りたい(写真上)。
 途中、東方に視界が開けた箇所があった(写真左)。箕谷方面の町並みが前方に確認できる。中々の景色である。
義経道から箕谷方面を望む
義経道から丹生山を望む  また、義経道の下りから、振り返ると丹生山が間近に見えるポイントがある(写真左)。
 デーンと座した丹生山は信仰の山らしく、重厚な感じがするように思ったのだが・・・どうだろう。

 さらに、つづらになった急な下り道を慎重に下っていると、分岐点が登場した。左は「坂本」と表示されている。今日は、箱木千年家の方に下るので、この分岐は右側に進む。
義経道から丹生山を望む
 丹生神社から下り始めて50分弱で麓まで降りついた。そこは、ちょうど「つくはらサイクリングセンター」の建物の西側であった(写真右 15:20)。
 また、そこは市バス衝原停留所の近くでもあり、帰りはバスに揺られ、神鉄箕谷駅に出ることにした。

 今日は、長い歴史を持つ帝釈鉱山の跡を確認することができ、また、未到の北川原三角点も確認できたので、満足の一日となった。
つくはらサイクリングセンターに出て来た
サイクリングセンターに出て来た
 地名、名跡などの伝承等の記載は、「源義経 鵯越の逆落し(野村貴郎・神鉄観光事業部刊)」、HP「北神戸 丹生山田の郷」を参考とさせていただきました。ありがとうございました。
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