菊水ルンゼ (お勧め度 マニア向き★★★) 鵯越・鈴蘭台周辺【5-10】

ダム工事で長い間遡行が不可能であった菊水ルンゼ。
工事が終わり、踏み入ることも可能となったと思われるので、早速アタックを試みた。

Route MAP
linelineline
説明が青色文字の写真はクリックで拡大します。
 菊水ルンゼは、菊水山の西側の急峻な斜面に位置するルンゼである。(ルンゼ [Runse] とは、ドイツ語起源の登山用語で、水の浸食作用で岩壁にできた急なけわしい溝のことをいう。)
 石井ダムの工事で、長い間、菊水山の西側の斜面は進入路が閉鎖され、麓からの遡行が不可能であった。ダム工事が着工から四半世紀を経て完成したことを受け、平成18年11月19日からダム周辺のコースが一般に開放された。そこで、今回(平成19年3月10日)は、菊水山西側斜面の菊水ルンゼの遡行を試みることにする。
烏原川沿いの道
烏原川沿いの道
烏原大橋  菊水ルンゼ進入口へは、鈴蘭台駅からのルートが便利である。まず、駅から菊水山登山口を目指して線路に沿って南に進む(9:30)。菊水山登山口からは石井ダムへと続くアスファルト道が線路沿いに作られている(写真上)。
 山中深い、烏原川の谷底を走る神戸電鉄の電車とすれ違いながら進むこと約20分でやがて烏原大橋が見えてくる(写真左 9:50)。
 烏原大橋からは、ダムを挟んで対面に菊水ルンゼの鋭い切れ込みが間近に見える。
烏原大橋
 この烏原大橋を南に渡りきると、有名な妙号岩がそびえ立っている。せっかくなので、妙号岩も確認していくことにする。
 橋を渡るとすぐ右手側に妙号岩の登場である。今日も、「南無阿弥陀仏」の妙号が、下を歩くハイカーを見守ってくれている(写真右)。妙号に手を合わせた後、いよいよ菊水ルンゼへアタックする。
 ところで、石井ダムの周遊路は解放されたが、ダムには試験湛水で水位高く水が貯められている。したがって、菊水ルンゼへの昔からの進入路は水没していて使えない。そこで、ルンゼまでは側面の斜面からトラバースして進むことになる。
妙号岩
妙号岩
菊水ルンゼへの取付道  ルンゼへの進入路は、烏原大橋を渡る手前の左側にある。ここから山の斜面に入る(10:00)。
 木にテープ表示がされた入口から踏み後がはっきりと続いている。これは、ダム工事が終了した後に新たに作られたルートのようで、山腹に真新しい踏み跡が続いている(写真左)。道無き箇所に苦労して開かれたルートであり、歩きにくい場所が続く。
 滑ってダム湖に転落という事態にならぬよう、ここは十分注意して進みたい。
菊水ルンゼへの取付道
 入口から約5分進んでルンゼの麓に到着(10:05)。ここからダムを挟んで反対側には妙号岩が見えている。
 この斜面には、大きな岩が崩れてころがっている。岩には次に進むべき方向が赤いペンキで記されている(写真右)。
 この岩場を横切ってもう少し進むと、谷筋に至る。ここが菊水ルンゼの遡行起点と思われる。
菊水ルンゼ下部のガレ場
菊水ルンゼ下部のガレ場
ルンゼの急斜面に張られたロープ  谷筋にそってロープがあり、これを伝って登っていけそうである。
 しかし、足元の岩に、谷筋方面へは薄い×印が付けられている。
 ふと、左手側の斜面を見ると、こちらにも太いロープがたらされ、赤ペンキの矢印がある。ルンゼはどう考えても、×印の方と思われたが、左手側の表示の方が新しそうなので、まずは左手側に進んでみることにした。
ルンゼの急斜面に張られたロープ
 ロープは、鋭い急斜面に張られている。
 この斜面はロープがなければ、素人では登坂が難しいと思われる状態なので、登坂用具を使用してロープが丁寧に張ってある(写真右)。このロープは非常に助かる。ルートを開拓した方には「感謝」の一言である。
 全体重をロープに預けて、斜面を腕力で登っていく。
固定されたロープ
固定されたロープ
ルンゼに設置された観測機器   15分ほど登って愕然とした。
 そこは尾根筋の突端となった箇所で、そこから先は、前には進めなくなっていた(10:26)。そして、何やらソーラーパネル付の観測機器が据え付けられているではないか(写真左)。ダム周辺の降水量等の観測用であろうか。
 このルートは、観測機器の保守管理用の道でしかなかったのだ。
ルンゼに設置された観測機器
  観測機器に突き当たり、がっかりしたものの、天は我を見捨てなかった。
 そこには、絶好のビューポイントが広がっていたのだ。
 ダム湖の水面やダムの周遊路が眼前に望める(写真右)。
 そのダム周遊路では、数名のハイカーが散策を楽しんでいる。こちらの方向を眺めているハイカーもいる(写真右の、橋の中央辺りにこちらを向いた人影があるのが確認いただけるだろうか。)。散策するハイカーから、「あんな所に登っているバカがいるゾ!」と思われてはいけないので、展望もそこそこに元の場所に下ることにした。
観測機器のある場所からの景色
観測機器のある場所からの景色
菊水ルンゼ  元の場所に戻り、こんどは薄い×印が付けられている谷筋の方向に進んでいった。
 こちらは、侵食された谷筋にロープがたらされている。
 このルートは、まさに「水の浸食作用により岩壁にできた急なけわしい溝」状のコースであり、菊水ルンゼそのものに間違いないと確信した。
 岩壁の谷筋はロープがなければ、素人では登坂が難しいと思われる箇所が多々ある。ここにも登坂用具を使用してロープが丁寧に張ってある。ルートの整備をされた方に感謝しながら登坂していく。
菊水ルンゼ
 ところで、先ほども記したが、ルンゼとは「水が岩壁を浸食してできた急なけわしい溝」のことであり、当然、菊水ルンゼも岩を侵食する程度の水量のある流れ が存在するものと思っていた。
 しかし、ここのルンゼは「チョロチョ」程度の水量で、岩が湿っている箇所もあるといった感じだ。これは、意外であった。こんな水量では岩壁を浸食できないであろうと思ったが、冬季は侵食活動が弱まる時期なのかもしれない。
 急な岩場の登りを、ロープを頼りに慎重に身体を引き上げていく。登り始めて10分ほどで岩場は終了した。岩場が終わった辺りには2つ目の観測機器が据え付けられていた。
菊水ルンゼの深い溝
菊水ルンゼの深い溝
菊水ルンゼ展望岩  更に、そこから2分ほど進むと、ルートが左右に分かれていた。そして、左方向には、「20M先展望岩」と記載された案内表示があった(10:44)。展望岩とはどんなものだろうと興味を引かれ、左方向に進んでみた。すぐに急な斜面となり、ロープが設置されていたので、これを頼りに一気に斜面を登りきると、いきなり前方に視界が開けた。大きな一枚岩がテラス状になり、まさに展望岩と呼べる大岩がそこにあったのである(10:46 写真左)。
 展望岩はやや前面に傾斜するような状態でテラスとなっている。ズルズルと滑って落ちるのではないかと感じながらも、恐る恐る展望岩の上に載ってみた。滑ることは無いようだ。慎重に一歩ずつ前に歩を進め、最先端までいってみる。
菊水ルンゼ展望岩
展望岩からの景色 展望岩からの景色(鈴蘭台方面)
展望岩からの景色 展望岩からの景色(鈴蘭台方面)
ルンゼ上部の尾根道  すばらしい!!眼前に180度のパノラマである。眼下には石井ダム、それを取り巻く山々が一望できるのである(写真左上、上)。
 菊水ルンゼに入るハイカーは少ないので、この絶景がゆっくりと独占できる。
 10分ほど展望岩で、景色を満喫した後、菊水山山頂を目指して出発した(10:56)。展望岩の案内表示のあった箇所まで下ってきて、こんどはルートを右方向に取る。いきなり急な登りとなった。ここもロープを頼りに身体を引き上げる。急坂を登り切った辺りもちょっとした展望台になっている。ここから、先ほど登った展望岩が前方に確認できる。この展望良好な箇所を過ぎると、道は普通の尾根道となった。しっかりとした山道であり、昔から歩かれている道であることが分かる(写真左)。
ルンゼ上部の尾根道
 尾根道を数分登ると、右手側から山道が合流してきた。菊水尾根方面からの道であり、今日の下山はここを下ることにしたい。
 菊水山の頂上を目指して尾根道を更に登る。
 11時14分、急坂を登りきって展望台の設置された大きなアンテナ施設の南西側に出てきた。菊水山頂に到着である。登り始めて約1時間15分を経過していた。ハイカーにとって、菊水山は人気のスポットであり、晴天の山頂には、いつものように多くのハイカーが思い思いにくつろいでいた(写真右)。菊水ルンゼで1人のハイカーにも出会わなかったことと対照的である。
菊水山頂上
菊水山頂上
菊水山頂上(三角点)  菊水山頂上には、ポツンと三角点も埋められている(写真左)。
 山頂で10分ほど休憩した後、下山を開始した(11:25)。
 先ほど登ってきた道を逆に下っていく。
 菊水ルンゼとの分岐点で左右に分岐する道を左にとり、菊水尾根方向に進む。菊水尾根も急な下り道であり、ロープの設置がなされている(写真下)。次にまた道が左右に分岐した。踏み跡は左方面の道の方がしっかりしているが、尾根道は右だろうと思い、右に進む。
菊水山頂上(三角点)
 ルートは笹が生い茂りあまり人が歩いていないことは一目で分かった。しかし、赤いペンキの矢印で方向が表示されている。これに従い進んでいくと、尾根を少し下った辺りで、笹深いブッシュの中に観測機器が設置された場所で行き止まりとなってじまった(11:42)。
 またまた、観測機器の保守点検ルートに迷い込んでしまった。
 しかたなく尾根まで引き返すと、尾根にはかすかなふみ跡が南方向に続いていた。
 この道は、ダム工事が始まるまでは一般に利用されていた菊水尾根道であろう。これに従い、笹を掻き分けながら進んでいくと、こんどは石井ダムの堰堤上部に到達した(11:45 写真下)。ここからはちょっと下れそうにない。
菊水尾根(急な下り)
菊水尾根(急な下り)
石井ダム堰堤  ダム堰堤への直滑降はあきらめ、先ほどの左右分岐点まで引き返して(11:56)、今度は踏み跡のしっかりついた左方向の道に踏み入る。
 こちらの道は、急坂の箇所にはロープが設置され、ちゃんと整備された山道である。
 このルートは、全山縦走路のちょうど西側に位置する菊水山登山路なのである。
 菊水山への登山者は多いが、こちらのルートを知る人は少ないようで、この道ではまったく人に逢わなかった。
 縦走路のようなプラ板の階段もなく、こちらのルートの方がよっぽど味わいがあるように思われるのだが・・。
石井ダム堰堤
 この道を数分下って、「←菊水山」と案内表示のある箇所まで下りてきた(12:04)。ここからは「ガンチャン新道」と名付けられたルートが分岐していた。
 次の機会にはこのガンチャン新道にも歩を進めてみたい。
 この地点から更に下ること約4分で、全山縦走路に合流した(12:08)。そこは「菊水山あと900m」と表示されたベンチのある場所のやや下手だった。
 ここからは縦走路を逆歩し、鵯越駅で電車に乗り帰途に着いた。今回、遡行した菊水ルンゼはロープが設置され、ルート整備がしっかりとなされており、スリルある遡行を思う存分楽しむことができ、最高であった。ルートを開拓された先達の方には大いに感謝したい。
菊水尾根
菊水尾根
 菊水ルンゼはルートの整備がなされているとはいうものの、危険な箇所があることに変わりはないので、このルートを歩行される方は自らの判断と責任で十分注意して行動して下さい。
このページTOPへ

HOME 1表六甲 2北六甲 3西六甲 4東六甲 5鵯越周辺 6丹生山系 7関西の山
 
linelineline